第一回科研基盤A集会の記録
第5回 BinNセミナー -今何を観測しモデル化すべきか-
/~hato/kaken/kaken.html
日時:2009年6月20日(土),1030-1600
場所:東京大学工学14号館144教室@本郷
主催:科研基盤A プローブ技術を援用したデータフュージョン理論に
よる総合的交通行動調査の高度化(代表:羽藤英二)
主な討議者
羽藤英二(東京大学):首謀者な人
奥村誠(東北大学):香港帰りで寝不足.調査が好き
河野浩之:日本で最初にサーチエンジンつくった人.DBと解析
上田孝(東京大学):暇なのできた.
佐々木邦明(山梨大学):店長です.
山本俊行(名古屋大学):どうやって補うかに関心がある.
倉内慎也(愛媛大学):PTをPPで補うようなことをやっている.
福田大輔(東京工業大学):データで推定するのが好き
井料隆雅(神戸大学):モデルはデータで実証しないと意味がないです.
北澤俊彦(阪神高速):阪神高速で交通管制システムについて考えています.
有村幹治(日本大学):運政研,寒地土研,ドーコンを経て現職
井上亮(東京大学):可視化の実装してます.どう生かすか.
話題1:信頼性から最適化まで:大規模データ・ソリューション(河野浩之:南山大学)
羽藤:DBにおいて,最短経路探索が主流というのは結局アルゴリズム
ではなくて開発していくと,ハッシュとかデータ構造が重要になるとい
う問題で,それだけ多くのクエリがマッシュアップされたサービスに負
荷としてかかるようになってきたということだろう.それとAnonimazer
というのは,前回の科研でやっていたクローニングと同じ技術だろう.
統計データを平均値,分散だけ個人情報を隠蔽して公開しただけではデ
ータの有効利用にならないような気がする.気象予報ビジネスの裾野の
広がりをみていれば明らかである.プライバシーの問題は,PT調査実
施時の利用可能性が公共の中で狭く捉えられすぎているから難しくなっ
ているのではないか.
高野:実際にPTを利用したい会社は多い.大学の研究であれば使える
場合がある.PT不要というよりも,もっと活用シーンがあるのではな
いか.
河野:情報処理では企業側がプライバシー問題について法律の専門家を
つけて議論している.兎に角当事者を分類して考えることが重要.
羽藤:交通データの場合は統計法の絡みもあってこの部分が厳しい.し
かし法律の議論をする人をおいて(PTやプローブパーソンを実施する
側,コンサルタントかもしれない),二次利用でうまく使える仕組みを
考えるべきである.
奥村:プライバシーもいいけど,緊急コールというか助けてほしいみた
いな時はどうするか.パブリックな機能が重要だと思う.
羽藤:ISOに緊急コールの仕様の話は入っているので問題がない.
上田:盲導犬につけたらどうかという話が出た.そもそもこういう情報
インフラの費用便益をしたいという話だろうからLBSの便益を出す必要
がある.調査を行ったときと行わないときのベイズ的なやり方で調査の
便益を測る必要があるのではないか.社会実験の費用便益をやっていな
いんだけど,それをやっぱり仮想的でもいいから兎に角やったほうがい
いかもしれないと思う.たとえば,昔のデータでやった場合で結果が違
うから.とか.それと,気象予測は何でやっているのか?気象予測の費
用便益分析は何でやっているのかといえば,たくさんの人がそれでビジ
ネスもしているだろう.
佐々木:調査の費用便益はこんなのやると最適という設計ができるはず
だと思う.
奥村:でも,はじめからこんな効果がでるとは想定できない部分がある
んじゃないか.その部分については,データがないのに精度のいい話は
できないはず.両者を予めわけることはできないんじゃないか?
上田:定型化しているものは費用便益でいい.羽藤さんが昼間いったよ
うな新しい話があって,そうじゃないものをどうするかという話も重要.
いずれにせよ費用便益という考え方が調査は抜けていたかもしれない.
話題2:阪神高速の交通管制システム(北澤俊彦:阪神高速)
羽藤:データウエアハウスは失敗しているという話をあちことで聞いて
いるが(笑),その理由は何か.そんなに失敗でもないのかな.
北沢:失敗でもないが,実際には使われなかった,回線が遅いのが致命
的だと思う.最近は多角化して(環境や料金割り引き政策)の問題もあっ
て,いろいろ使われ始めているし,空気としては悪くない.
河野:そもそも国のシステムの仕様書が厳しく書きすぎていて使い勝手
が悪い.結果としてできたシステムはきびしいものになってしまった.
稼働率が99.9%という縛りだとたいへんな高コストシステムになる.セ
キュリティの問題でシステム性能が低く抑えられているのも問題である.
山本:まれな事象はちゃんととる(情報価値が高い)ということが重要
なので,たくさんとるべきである.
羽藤:しかし時間がたつとアーカイブされても検索に時間がかかるよう
ではその情報がモデラー側では使われないことになる.品質を確保する
ための仕組みが重要である.それと,研究者が委員会なんかで作ったモ
デルが一回だけは使えても,二度目は役に立たない場合が多い.モデル
はそのつど使い捨てるものなのかという気もすると残念である.
話題3:交通解析とデータフュージョン(井料隆雅:神戸大学)
井料:羽藤さんは何をやりたいのか,この科研で僕らに何をやらせよう
としているのか?
羽藤:一つ目は同じ種類のデータで観測分解能の違うデータがあるので,
このデータを結合させたい.PTよりも分解能の高いPPデータを位置
データを用いてアクセスやイグレスなども細かな推定をやりつつ,母集
団の代表性はPTで確保し,所要時間と料金項は共通項で安定的に推定
するような方法を考えている.もうひとつはOD推定のように,PPの
ようなラグランジュ的な観測と路側観測交通のようなオイラー的観測を
フュージョンするということを考えている.そこは最低線で,そこから
出発してどれだけ挑戦していけるかだと思う.
奥村:調査のときに,都市間流動調査において,月間データがない.チ
ケットはある.どうやって拡大するか?という問題を考えるときどうす
ればいいか.拡大係数で考える.ミクロなデータの出現頻度を踏まえて
拡大させたいんだけど,どうすればいいか.
井料:統計モデルでフュージョンするしかないと思う.ワンショットだ
と問題がある(分散が計測できない)ので,クロス集計結果をどう使う
かだと思う.
福田:交通行動モデルをやっていて内的妥当性はいいんだけど,外的妥
当性をかせげないジレンマがあるように思う.この問題をどうやって解
決すればいいかが問題である.井料さんはどう思っているのか?
井料:予算の制約の中で知りたい場合はいいんだけど.既にあるデータ
をにじりよろうすると難しくなる.やはりまわりくどいのではないかと
思う.とりたいデータだけをとるしかないのではないか.
羽藤:いやでも井料さんは交通は「質より量を稼ぐしかないであろう」
って言ったじゃない,矛盾してるよね(笑).データの利用については
えーと,,そうはいってもデータがたまってきている状況があるので,
そこに何かを見出す努力をしていかなきゃいけないと思う.ジレンマは
わかるけれども,政策分析やってるとデータだけじゃなくてモデルもレ
ガシーを使いたくなる.この問題とどう向き合うかじゃないだろうか.
井料:基本はそうだと思う.
話題4:データオリエンテッドな最適化理論(有村幹治:日本大学)
羽藤:GAでまちづくりの人間関係まで最適化しようというのはちょっ
とやりすぎじゃないか.KDDだけではとは思うが,というか最適化の理論
そのものはいきついているのか,そうでもないのか.DBの話になって
しまう気もする.
有村:でも現実には,GAの研究者からはそういう話はでてきている.
最適化の問題も対象がずいぶん変化しつつあるのではないだろうか.関
心が社会の最適化に向かいつつあるのではないかと思う.
山本:物流でもAnt Clony Optimazaitionなどを使って輸送問題を解い
ている例があるが,そういう分野はまだまだ最適化で,解きにくい問題
がごろごろしていると思う.
話題5:交通調査に何が欠けているか?新しい解析モデルの展望(山本俊行:名古屋大学)
井料:パラメータの同時推定の話をもうちょっと聞かせてください.そ
れはどういう方法になりますか.精度の違いはどうなるのか.
山本:山田・森川のSP/RPの融合推定で一般的な方法で,同一観測
データで同じパラメータと異なるパラメータを同時に推定する方法であ
る.xの観測精度が悪いとすると,それは問題だが,,
佐々木:私がいうのもなんだけど,山本さんの方法と山田・森川の方法
は少し違っていて,山田・森川論文では同一個人で推定しているから問
題ないということになっている.
倉内:ずっと考えていたんだけれど,そもそもフュージョンする際,悪
いデータをどうやって間引くかが重要ではないか.
佐々木:悪いデータを識別できるかというと識別はできるかもしれない.
羽藤:悪いデータは識別できてもそれが真値かどうかは識別できるかと
いうと弁別できないんじゃないだろうか.悪いデータの方が一人十色の
ような本当の現実をしめしているのかもしれない.パラメータの
fittingとは別問題である.
佐々木:確かにそうかも(笑).
奥村:羽藤さんは一人十色と以前からいっているが,それはもういいっ
ていうこと,無理っていうことになるのか,データでいいという話をし
ているのはどうもそう聞こえる.
上田:次元の呪いの話が午前中にもあったが,結局はデータをどう見る
かというモデルが必要になると思う.複雑なものを複雑に見ていてはよ
くわからない.
羽藤:総合戦略でバス停なんかの位置,結節点,道路空間の再配分,東
京2050でやろうとするとどうしてもそういう細かい話が重要になっ
てくる.昔とはプラニングに必要なモデルもデータも違う..で,そう
いうものを評価しようとすると,たとえばアクセスとかイグレスをある
程度分解能をあげて測ってモデルでフュージョンしないと無理である.
で,そういうものがないので,うまく進んでいない現場があるんじゃな
いでしょうか.少なくとも現場で戦っているプランナーに届く数値やモ
デルがある状況ではない.一方で,複雑なデータをどう眺めるか,そも
そも球面集中とか(笑),そこから何を見出すかについてはサイエンス
としてぜんぜん違うことも考えています.
有村:車両の設計でCD値を計算するために最適化をぎちぎちやるみた
いな話がまちづくりにもあると思っていて,最適化はそういうシーンで
は求められていると思う.
金森:今日の話は,東京2050で,PTは定期健診でそういう人間ドック
でどこまでできるか?という話もある.そこにPPを掛け合わせるとい
うことだと理解した.
羽藤:堅い予測をどうするかも大切だけれど,僕が関心があるのは
(北村先生が相当拘っていた)Built Environmentの話と差異と変化を
識別しましょういう話である.結局,パネルでこりたせいかあまりやら
れていないが何でか.そういうことに迫っていきたい.
井上:私がやっているのは空間情報の圧縮とか,可視化になる.交通の
データをどうやって可視化するかはなかなか難しいとは思うが,時間地
図のようなものだと既にやっている.軌跡をどう表現するかはなかなか
難しい感じもする.
河野:先細の井料さんの話だが,金融でも具体的なデータでひっつけな
いで,アノニマスも1/0ではないような方法を考えていることが重要
という概念が定着しつつある.金融では違う会社のデータをどうやって
扱うかというときに,全部くっつけるとたいへんなので部分結合を行っ
ている.そういう方法が参考になるのではないか.
奥村:羽藤さんのいう「よりよい理解」とはどういう意味なのかが僕は
気になる.
羽藤:腑に落ちるということだと思う.それは今までの理解が,ひとつ
上の概念として抽象化されたということである.
福田:データの方が進化していて,統計分析などもかなり高度化してき
ている.いろいろ聞いていると行動モデルの側もしっかりしていかない
といけないと思う.変曲点に近いところを出せるのか?というところが
問われていて金融などではそのあたりの議論が(古くはカタストロフィ
理論などから)されているし,我々も勉強していかないといけない.
佐々木:だけど,変曲点を行動モデルができるかというと,,実は統計
モデルなんだから,そこはすごく苦手なところじゃないでしょうか.
羽藤:たとえば2050の社会シナリオを考えるとき,本当に行動モデルは
無力だろうか?人口減少時のおおまかな制約条件は均衡配分でも使えば
でるだろう.その制約条件下で協調とかを考えたければ,家政学のよう
なアプローチで家族の中のインタラクションをモデル化していくしかな
い.そうやって本質的な構造をモデル化していくことである部分には答
えをだしていけるのではないか.
上田:個人とか局所的な話にあまりいかないでほしい,変わることに集
中しないでほしい.変わらないことに着目してほしい.消費関数はこの
100年変わっていない.不変量をだして,変量をみることが重要であ
る.将棋盤理論,駒の動きは予測できない.むしろゲームを支配してい
るルールの生き残りをしらべる.トランプの設計が重要だと思う.
羽藤:費用便益をやっている上田先生からおもしろい話を聞いたような
気がする(笑).変化をうりにして,,戦後について誤解を恐れずいえ
ば,人口が増えてたいへんだからと叫んでやっちゃった.ということか
もしれない.そして今,縮退するからとムヤミヤタラに叫んでいるのは
確かに,上田さんが言うように同じ話だなと思った.もう少し一貫した
まなざしで社会を60年前に見つめるべきだったんじゃやないか,そし
て今同じことが私たちに求められていると思う.この科研では,学会で
は難しくなってきた掘り下げて話を議論してみたいと思う.
羽藤(まとめ):
今,情報爆発というよりも,データが指数関数的に増殖している中,モ
デルの側で何を見えるようにしていくのかが問われています.いくらデー
タがあってもそれは航空写真1枚あるようなもので,見たいものがなけ
れば,ある種の関係性を読み解こうとしなければ,何も見えてこない.
データとモデルの関係は繰り返され,私たち自身の分野で掘り下げられ,
語られてきたように思います.ときには自分たちの手で検知器を開発し
たり,ロジットモデルにスケールパラメータを加えIIA問題を解決した
り,追従理論の式に反応遅れ項を挿入し渋滞を表現したり,それらの成
果はORや計量経済学においても認められる得る大きな成果です.
時代が大きく変わろうとしているなら,それに乗かっていくのもいいで
しょうし,あえて普遍性を追うのもいいでしょう.大きな成果じゃなきゃ
いけないのか,といえば,私自身は正直そんなことは思いませんが,し
かしそういうことを一方で双方がしっかりと理解していることは重要だ
と思います.
IPFやSP/RPの融合推定,オイラー/ラグランジュ融合推定,クローニン
グやデータ正規化アルゴリズム,マイクロシミュレーションや最適化問
題,空間システムの設計やインセンティブの動的制御,空間情報と動的
な行動の可視化やKDD,BuiltEnvironmentに周期性.
こうした研究課題に対して,私たちが4年後どのような答えを出してい
るか楽しみでなりません.普遍的な真理を追うことを,北村先生は
Silver Builetを追うなといって昨年の行動モデル夏の学校で戒めました
が,その一方で最後までご自分自身で追っていたようにも思います.
楽しみながら,継続的に議論を進めつつ,実務家の皆様にも4年後くら
いには大きな成果を見せれるようがんばっていけたらと思います.今後
ともよろしくお願いいたします.